有名な火花とは違うもう1つの芥川賞受賞作品のスクラップアンドビルド全121ページ読みました。
(あらすじ)
健斗の祖父は「死にたい」と願う要介護老人。「もう毎日身体中が痛くて痛くて・・・どうもならんし、悪くなるばっか。よかことなんかひとつもなか。早う迎えにきてほしか。毎日そいばっか祈っとる」
孫の健斗は苦痛や恐怖心のない尊厳死の手助けができないかと考える。
「お母さん、お皿お願いします」
「自分で台所まで運ぶって約束でしょ。楽ばっかしていると寝たきりになるよ」
ありとあらゆる行動を取り上げて体を退化させては?
健斗は急に体を鍛え始めた。祖父にはできないことをやっている。自分の恵まれた点を再発見できた。
30を前にしての転職活動。勉強。筋トレ。
あるとき、健斗は母に祖父の入浴補助を頼まれた。いつもの筋トレがここで役に立つはず。緊張と距離感がつかめず異様に疲れる。
ガリガリの体でも・・・
浴槽に入れるとき手を離そうとするが祖父は手を離そうとしない。
「おぼれる」
「おぼれないよ、こんな狭い浴槽で」健斗は自分が入浴する際、水位を検証しておいた。
「ちょっとおしっこしてくるから」と。トイレへ行き、リビングで母の小言を聞く。メロンを1切れ食べ、風呂場へ。
ばちゃばちゃ音がする。両手をあちこちぶつけもがいている。怒られると感じた。ようやく浴槽の外へ。わざと沈めようと思われたのでは?
「ありがとう。健斗が助けてくれた。死ぬとこだった」
ようやく就職が決まった健斗と別れのとき
「さびしくなるね」
「茨城なんか近いんだし余裕ができたらまた戻ってくるよ」
「じいちゃんのことは気にせんで頑張れ」
「お母さんが怒るだろうから、じいちゃんの味方に。盆、暮れ、正月には必ず帰る。俺が帰るの待ってて」
「いや、健斗には健斗の時間があるけん、来んでよか。自分のことは自分でやる」